□05/10/30 #50 芸術祭十月大歌舞伎

9月は封切りしたて、10月は千穐楽間近の観劇日ということでほぼ2ヶ月ぶりの歌舞伎座。首を長くして待ってました。
十月の演目は昼の部「廓三番叟」「加賀見山旧錦絵」。夜の部「双蝶々曲輪日記」「日高川入相花王」「河庄」。今回のお楽しみは‘坂東玉三郎人形振りにて相勤め申し候’の日高川。
「廓〜」は読んで字の如く廓の遊女の三番叟踊り。千歳太夫(芝雀丈)、新造梅里(亀次郎丈)とのっけから好きな役者2人の長唄舞踊でご機嫌です。芝雀丈はいつも可愛らしくおしとやかな雰囲気。黒地に飛鶴と、紫地に滝と草花の2枚の総刺繍の豪華な裲襠を取替えながら、優雅に踊ります。亀次郎丈は若いのに踊りが誠に上手。指先まで神経が行き届いていてとっても美しい。浅葱色に鳳凰の絵羽の着付もステキ。5月の芋掘長者の緑御前の踊りも良かったし、個人的には将来の玉三郎?と思っている期待の星です。ぴったりな配役でとっても良い演目でした。
「加賀見山〜」は姫のお気に入りの中臈尾上(玉三郎丈)が気に入らない局岩藤(菊五郎丈)が、ねちねちと尾上をいじめ、盗みの疑いをかけられた尾上が自害して岩藤の悪行を訴え、尾上の召使お初(菊之助丈)が主人の仇を討つと言うもの。岩藤はじめ、仕える腰元どもまで憎々しげ。菊十郎丈の嫌味たっぷりのババア腰元っぷりが面白い。地声でしゃべる腰元を初めて見た(笑)。この話の主人公は尾上だが、我慢役なので少々地味。しかし最期、屈辱を受けた悔しさの迫真の演技が凄い。菊之助丈の主人を気遣うお初役が瑞々しくてお似合い。最後は見事に岩藤を討って悪事を暴き、二代目尾上として取立てられるのでした。
さて、お楽しみの「日高川」は人形浄瑠璃を真似て役者が人形のように演じる「人形振り」。清姫(玉三郎丈)が恋しい安珍逢いたさに道成寺に向かう途中、日高川の渡しで船頭に意地悪をされて、川を渡れなくなってしまう。怒った清姫は蛇に姿を変えて川を渡るというもの。やっぱり玉三郎丈はこういう華やかな役で観たい。人間が人形のように動くのも想像以上に難しいと思うが、美しい玉三郎丈の清姫はまさに人形のよう。最後は銀の鱗模様にぶっ返って、般若の形相になりながら波に揉まれ川を渡っていくが、恋する女の苦悩がよく表れた素晴らしい舞台でした。今回は時間の都合で「河庄」は観られなくて残念。
写真はライトアップされた夜の歌舞伎座です。



□05/10/04 #49 九月大歌舞伎

9月の歌舞伎座は何と言っても歌舞伎の代名詞「勧進帳」です!これまでいろいろな演目を観たけれど、勧進帳はTVですら観たことがなかったので、これは絶対良い席で観たい!と一等席を取ったところ、なんと!前から2列目の花道から3番目の席が取れちゃいました!
昼の部は「正札附根元草摺」「賀の祝」「豊後道成寺」「東海道中膝栗毛」。夜の部は「平家蟹」「勧進帳」「忠臣連理の鉢植」。
「正札附〜」は長唄の踊り。曽我五郎(橋之助丈)が鎧を抱えて敵のもとに駆けつけようとするところを小林朝比奈の妹舞鶴(魁春丈)が鎧の草摺をつかんでとどめるというもの。顔に隈をとる「荒事」の踊りで、いかにも歌舞伎らしくて華やか。特に舞鶴の紫の素襖に緑の鶴菱柄、紅い鹿の子の裾裏の着物に黒地に花丸紋の帯と、着付がとても美しく素敵でした。
「豊後〜」は娘道成寺の豊後節版。豊後節とは今の常磐津や清元の源流となる音楽だそうで、歌詞は同じだけれどもとの長唄とは節回しが少し違って、艶っぽい感じ。久しぶりの雀右衛門丈は相変わらずお美しいが、動きにキレがなくて観ているこちらが心配になってしまった。24日間も踊り通せるだろうか…?あまり体が思うように動かないらしい。高齢なのでしょうがないとして、いつまでもお元気で舞台に上って欲しい。もとの娘道成寺の着付は紅だけれど、こちらは黒で、速変わりは卵色の着付。髪はちょっと粋な感じに結ってあって、飾りもいぶし銀色の洒落たもの。雀右衛門丈のセンスの良さが光っていました。
「膝栗毛」はなんと!弥次さん(富十郎丈)喜多さん(吉右衛門丈)が江戸から愛知万博に行ってしまうというもの。江戸を発って(舞台を下りて)客席を一周するとそこはもう小田原(笑)。鳥追いのスリ(福助丈)や若衆に化けた仇討ちの姫(芝雀丈)やらに追いかけられたり細木なんたらの占い師にからまれたりしているうちに愛知万博へ。マンモスの牙やらモリゾー、キッコロの着ぐるみまで出てきて、尾張万博守(似合い過ぎの梅玉丈)まで出てくる始末。初日の次の日だからか、あんまりハジケきれていなくて観ていて歯がゆい感じがしてしまいました。
「平家蟹」は壇ノ浦の戦で源氏に敗れた平家の生き残った女官・玉蟲(芝翫丈)が、昔の栄華と源氏を怨んで日々暮らしているが、事もあろうに妹の玉琴(魁春丈)が源氏の武士与五郎(橋之助丈)と夫婦になりたいと言い出し怒りが爆発。夜毎這い出てくる不気味な平家蟹を浸した怨みの毒酒を二人に飲ませ、殺してしまう。遂には自分も平家蟹に呼ばれるように海に沈んでいくのでした。相変わらず芝居の上手い芝翫丈。醸し出す雰囲気が独特で、おどろおどろしい雰囲気が良く出ていました
さて、お待ちかねの「勧進帳」。義経の奥州落ちを題材にした歌舞伎の代表作とも言える人気作。兄の頼朝に疎まれた義経(福助丈)が強力に身をやつし、弁慶(吉右衛門丈)など供を連れ奥州に落ち延びる途中、安宅の関の関守・富樫左衛門(富十郎丈)に怪しまれるが、弁慶が勧進の旅だと持っていた巻物を読み上げる。富樫は強力を義経と睨むが、弁慶が咄嗟に「卑しい強力め」と杖で打ち据え、富樫は義経一行と知りつつも見逃してやる。感謝した弁慶は礼に延年の舞を舞い、舞の途中で「それ、今のうちにお行きなさい」と扇で煽ると、義経たちは素早くその場を後にする。弁慶一人が残り幕が閉まると、知りながらも関を通した富樫に深く感謝し、急ぎ関を後にする。
手を伸ばせは届きそうな花道の上に、義経と弁慶。間近に見る吉右衛門丈扮する弁慶はそれはそれは立派で、ひときわ大きなオーラが出ていました。すらすらと勧進帳を読み上げる口跡の見事なこと、鬼のような見得の迫力の凄いこと、さすがは播磨屋!!その間の福助丈はぴくりとも動かずこれぞ役者魂といったところ。吉右衛門丈おハコの酒を呑む場面はコレまた美味しそうにゴクゴクと飲み干し、上機嫌に舞い出しますが、その舞もまた豪快で素晴らしい。勇み飛び六方で花道を引っ込んで、小さくなっていく姿を目の前で観て、もう感無量。感動で思わず涙が浮かんできてしまいました。さすがは名作!お家芸・団十郎丈も「本当に良くできた話」と言っていましたが、これを観ずして歌舞伎を語るべからず…と言えるでしょう。
さて、「忠臣連理〜」は四十七士のひとり、千崎弥五郎(梅玉丈)は町娘にちやほやされる色男。弥七と名を変え、植木屋を営みながら仇討ちを企んでいる。腰元のお高(時蔵丈)と恋仲で、夫婦になろうと言い交わしているが、お高は弥五郎のために仇の高師直の妾になって、高家の絵図面を手に入れる。そうとは知らない弥五郎は「お方さま」と呼ばれ、お供をたくさん引き連れて植木屋に現れたお高を見てびっくり。裏切られたと思い、溜息をつきつき嫌々ながら相手をする。お高は絵図面を渡すと、恋人も主人も裏切った罪を思い籠の中で自害して果てる。いつもカッコイイ二枚目や殿様などの役が多い梅玉丈には珍しい、上方風のなよっちいやさ男。それなりに良かったけれど、折角の間近なのでカッコイイところが見たかった。時蔵丈は遠目で見ても綺麗だけれど、間近で見るともっと美しい!至近距離でもアラはなし!思わず「綺麗〜」と見とれてしまいました。町娘役の松也丈や梅枝丈は、鈴を転がすような声で肌もぴちぴちしていてサスガは若い!とっても良かった。
今回は本当に大・大・大満足!いい芝居をいい席で観られて幸せでした。



□05/10/04 #48 八月納涼歌舞伎

遅くなってしまいましたが、8月の歌舞伎座、第二部と第三部を観てきました。第二部「伊勢音頭恋寝刃」「蝶の道行」「京人形」。第三部「法界坊」。
「伊勢音頭〜」は伊勢の御師の福岡貢(三津五郎丈)がかつての主人のために御家の重宝の刀を取り戻し、主人に渡すために遊女屋の油屋にやってくるが、恋仲のお紺(福助丈)には愛想尽かしをされ、仲居の万野(勘三郎丈)には意地悪をされ、刀まですり替えられて、ついには怒りが頂点に達します。一度は店を出るものの、再び戻った貢は万野を斬り殺すと次々と店の者を殺します。三津五郎丈の色悪も勘三郎丈の憎まれ役もなんとなく中途半端な感じがしました。
「蝶〜」は珍しい竹本の踊り。いつもと違って「べんべん〜」節でちょっと不思議な感じ。この世で一緒になれなかった男女(染五郎丈・孝太郎丈)があの世で蝶となり共に踊るというものですが、孝太郎丈が仁左衛門丈と踊った二月の「二人椀久」に比べれば全然良くない気がしました。(まあ2人ともあまり私のヒイキでない…ということもありますけど)
「京人形」は日光東照宮の彫刻を造った左甚五郎(橋之助丈)が、京の廓で見た美しい太夫が忘れられなくて、太夫に似せた人形(扇雀丈)を造ります。それを見ながら満足げに酒盛りを始めると、不思議なことに人形が箱から飛び出しています。甚五郎が動くと一緒に動きます。美しいのに、動きは男。そこで太夫にもらった鏡を人形の懐に入れると、太夫のように優雅に動きます。人形のようにギクシャクと動く姿もおかしいお話でした。
さて、話題の法界坊。3ヶ月に渡る襲名披露の熱も冷めやらないうちに勘三郎丈の登場です。荒くれ坊主の法界坊(勘三郎丈)は永楽屋の娘お組(扇雀丈)に一目惚れ。お組は気持ち悪がって逃げ回ります。お組と恋仲の手代の要助(福助丈)は、実は御家再興を期す吉田家の嫡男。お家の重宝「鯉魚の一軸」を山崎屋勘十郎(勘太郎丈)が持っていると知り、座敷に呼び出して軸をすり替えるが、そこに忍び込んできた法界坊が自分が持っていたボロの軸をまたすり替える。そしてお組を誘拐しようとするが失敗。要助に会いに来た許婚の野分姫(七之助丈)も誘拐しようとするが抵抗され、「要助は姫を邪魔に思っている」と言うとがっかりした姫はあっさり斬り殺される。様子を見ていた吉田家の忠臣甚三郎(橋之助丈)が法界坊を殺して穴に落とすと、法界坊の霊は野分姫の霊と合体して飛び去っていく。要助がお組と共に野分姫の霊を弔っていると、そこへお組とそっくりの女が現れるが、それは法界坊と野分姫の霊であった。
例によって、お得意のお笑い歌舞伎といった感じで、脇に置いた芝居見物を模した人形が、実は生の人間で突如動き出したり、大袈裟な動きで軸をすり替えあったり、「こういうい〜ところで揚幕からちゃり〜ん!と橋之助が出てきてやられるんだ!!」とか言って笑わせてみたり、面白おかしい。合体霊になるところは宙吊りで3階席まで飛んできて、ここも見せ所。話が複雑で解りづらいけれど、それなりに楽しい舞台でした。



□05/08/08 #47 粋だねぇ〜

「花の外には松ばかり 花の外には松ばかり 暮れ初めて鐘や響くらん」

歌舞伎を観始めた頃は長唄も常磐津も清元もごっちゃで区別がつかなかったのですが、長唄舞踊を観て、踊りとそれを引き立てる長唄に感動。ちんとんしゃん〜という細竿三味線の繊細な音色が粋でとても素敵です。特に踊りが小区切りになる三味線の見せ所「合の手」が楽しみになりました。そこでさっそく長唄のCDを購入。お気に入りはやはり「京鹿子娘道成寺」。これぞ名曲です。そして、合の手でお気に入りは勧進帳。どこかで聴いたことあると思ったら、吉右衛門丈の時代劇「切捨て御免」で流れていました。海老蔵丈が新之助時代にお茶のCMで踊っていたのは「元禄花見踊」。はんなりしていて素敵です。
いつか自分も三味線を習ってみたいと思うけれど、こんな風に弾きこなすのは、百年経っても無理でしょうね(笑)。

オススメ長唄CD
長唄 /コロムビア/ASIN: B0000C9VLS
 名曲ばかり入っています。これはおトク。
長唄三味線 /コロムビア/ASIN: B00005EO55
 三味線の聴かせどころを集めた合の手集。聴きごたえがあります。
長唄 /キングレコード/ASIN: B00005HPHU
 藤の綺麗なジャケット。「助六」「藤娘」など名曲が入ってます。



□05/07/08 #46 七月大歌舞伎

7月の歌舞伎座は蜷川幸雄氏演出の「十二夜」。千穐楽を観てきました。シェークスピア作のお話で、ヴァイオラ→琵琶姫 シザーリオ→獅子丸 セバスチャン→斯波主膳之助 オリヴィア→織笛姫 オーシーノ公爵→大篠左大臣とうまい具合に役を和名に変えています。
セットはいつもと違って全部鏡面で、奥が明るくなると透けて見えるという凝りよう。普段舞台と言えば歌舞伎しか観ないので、現代の演出はなかなか新鮮で良いものです。
双子の主膳之助と琵琶姫(菊之助丈)は航海中に嵐に遭い遭難。琵琶姫は獅子丸という男に化け、左大臣(信二郎丈)に仕えます。左大臣は織笛姫(時蔵丈)にぞっこんですが、織笛姫は嫌がるばかり。なんとか気を惹きたい左大臣は見目麗しい獅子丸を織笛姫に遣わします。ところが織笛姫は獅子丸に一目惚れ(でも女)。琵琶姫は一途な左大臣に惹かれてしまいます。織笛姫の伯父の洞院鐘道(左團次丈)は金持ちだがアホの安藤英竹(松禄丈)を織笛姫の婿にしようと企んでいます。
洞院鐘道を目の仇にしている丸尾坊太夫(菊五郎丈)は主人の織笛姫に惹かれているのですが、それを知った腰元の麻阿(亀次郎丈)は偽の恋文を書いて落とし太夫に拾わせ、太夫はもう有頂天。姫の大嫌いなウコン色で全身を固めてうすら笑いを浮かべながら姫の元へ行くと、呆れ嫌われてしまいます。次は英竹が鐘道にそそのかされて獅子丸を討とうとするのですが、そこに主膳之助が現れて、獅子丸が二人いる!と大騒ぎ。獅子丸が実は琵琶姫で女とわかると、織笛姫はスバヤク主膳之助に乗り換え。主膳之助もまんざらでなし。左大臣も一向に気の無い織笛姫からさっさと琵琶姫に乗り換え。結局はずべて円くおさまり、ハッピーエンドとなるのでした。
主役の菊之助丈は白塗りの肌が博多人形のように美しく、つい見とれてしまいました。今が旬ですね〜。獅子丸実は琵琶姫が気を抜くと女言葉になってしまったり、なよなよしてしまったりが可愛らしく、途中で御国風の衣装を着て舞を舞う場面もとても美しく素敵でした。
かなり強烈なキャラが亀次郎丈演じる麻阿。お菓子をつまんで指をベロベロ舐めてみたり、どかっとコケて笑いを取ったり、偽文を企んだりとやりたい放題。女が鍵となって話をひっかき回すあたりは西洋風。(歌舞伎では女はあくまでおしとやかに、だから)松禄丈演じる安藤英竹はモロにアホ。変な服に変なヅラをつけて、扉をバッタンバッタンして手を挟んだり、こちらもやりたい&やられたい放題。笑わせるところは笑わせ、見せるところは見せる。セットは鏡面、スポットライトを効果的に使い、三味線(義太夫)のほかにもチェンバロで雰囲気を出したりして斬新だったのですが、私の意見としてはもっと三味線を使って徹底的に‘歌舞伎’にして欲しかったと思います。
隣のオバさんが一人でブツブツうるさかったのを除けばとても面白く楽しい舞台でした。菊之助丈ほか役者の皆さんの挑戦に拍手を送りたいと思います。(写真は銀座の裏道にある野草屋さんの店先にあった、夏らしい蓮の花。)



□05/08/08 #45 六月大歌舞伎

6月の歌舞伎座は昼の部「輝虎配膳」「素襖落」「恋飛脚大和往来」。夜の部は「盟三五大切」「良寛と子守」「教草吉原雀」。 今回のお楽しみは吉さまの「素襖落」。
「輝虎配膳」は越後の長尾輝虎(梅玉丈)が敵の軍師山本勘助を見方にしようと、勘助の母越路(秀太郎丈)と妻お勝(時蔵丈)を館に招いてもてなすのですが、企みを知った越路は輝虎が直々に持ってきたお膳を足蹴にして抵抗。怒った輝虎が越路に斬りかかるのですが、お勝がその場にあった琴をかき鳴らして輝虎を説得します。時蔵丈の弾く琴はニセモノ?と思ったのですが実際に音が出ていて、琴を弾く手際のよさに関心してしまいました。しかし、大きな琴を片手で軽々と持ち上げるのは、女形なのに少々イタダケません。
「素襖落」は狂言を舞踊仕立てにしたもの。大名(富十郎丈)の遣いで伯父宅を訪ねた太郎冠者(吉右衛門丈)は、出てきた姫御寮(魁春丈)に「褒美をとらす」と酒を振舞われます。最初は遠慮しぃしぃ呑んでいたのですが、酒好きの太郎冠者はおかわりして呑む始末。上機嫌になると御礼にと舞を舞います。気に入った姫御寮から褒美に素襖をいただいて屋敷に帰ると、大名と鈍太郎(歌昇丈)にほろ酔い加減なのが見つかって、隠していた素襖を「よこせ」「かえせ」と楽しげに取り合います。それにしても「五斗三番叟」の時もそうでしたが、吉さまはとても美味しそうにお酒を呑む(フリ)をします。酔っ払いの役をさせたら日本一ですね(笑)。
「恋飛脚〜」は飛脚問屋の忠兵衛(染五郎丈)が恋仲の遊女梅川(孝太郎丈)のもとに通うところで意地の悪い八右衛門(仁左衛門丈)にそそのかされ、飛脚の商売で預かった三百両の封印を切って梅川を身請けしてしまいます。預り金に手を付けるのは天下の大罪、忠兵衛と梅川は手に手を取って故郷の新口村へ逃げていきます。「封印切」の場の遊女屋の女将おえん(秀太郎丈)がケッサク。小気味のいい上方弁の面白いセリフがぽんぽん出て、超ハマリ役です。秀太郎丈はいつも座っているばかり(でも重要な)老婆役が多かったのですが、もっとこういういい味の出せる役をたくさん演ってほしいと思います。
「盟〜」は浪人の源五兵衛(吉右衛門丈)が惚れた芸者には実は亭主がいて、お家の再興のために工面した百両を騙し取られてしまいます。女に騙されたうえ、金まで奪われた源五兵衛は怒り狂う鬼と化し、関係の無い人間まで次々と斬り殺します。以前一度観て、話が複雑でよくわからなかったのですが、今回は吉右衛門丈だったのでまあまあ楽しめました。五人斬の場面の黒紋付に紅い裏の着物は残酷さの中にも色気があって、なかなか素敵でした。
「良寛〜」は良寛(富十郎丈)と子供たちが毬をついたり歌を歌ったりして遊ぶ舞踊劇。富十郎丈の愛娘 愛ちゃん(2〜3歳)が里の子役で舞台中をひょこひょこと歩き回ってかわいい。富十郎丈が座ればとなりにひょこんと座り、踊れば一緒に踊りだして、なかなか和む舞台でした。
「教草〜」は花の吉原で鳥売りの夫婦(梅玉丈、魁春丈)が風流に踊ります。梅玉丈は二枚目の役が多く、声もよく透り、なかなか良い役者です。
今回も楽しい1日でした。(写真は銀座の歩行者天国に出ていた風鈴屋さん。)



□05/05/23 #44 十八代目 中村勘三郎 襲名披露 五月大歌舞伎

3ヶ月に渡る十八代目襲名披露も今月で最後。今回のお楽しみは玉三郎丈の「鷺娘」と話題の「野田版 研辰の討たれ」。
昼の部は「菅原伝授手習鑑(車引)」「芋掘長者」「弥栄芝居賑」「梅雨小袖昔八丈」。夜の部は「義経千本桜(四の切)」「鷺娘」「野田版 研辰の討たれ」。
「弥栄芝居賑」は江戸の賑わう中村座に男伊達、女伊達が勢揃いして、「口上」のお芝居版といった感じです。花道に男伊達、舞台上手側の仮花道に女伊達の人気役者がずらり!と並び、こんなに豪華でいいの!?といった感じです。たまたま西側の袖の席だったので、女伊達の並ぶ仮花道がよ〜〜く見える特等席!!(3階の西袖席は花道と下手側1/4が見えないので、普段はあまり良い席ではないのです)玉三郎丈、時蔵丈、福助丈、菊之助丈、亀次郎丈…綺麗どころがずらりと並んで壮観です。これはとっても特しちゃいました!
「鷺娘」は本当に美しく素晴らしい、幻想的な舞台でした。白無垢の着物に黒の帯、白い帽子を被った鷺娘が雪の降りしきる中、しずしずと踊り始めます。白無垢からぱっと真紅の着物、藤色の着物、薄紅色の着物へと次々に変わっていき、鷺の姿にぶっかえった娘は肩に傷を負い、遂には息絶えます。玉三郎丈は今までに400回以上もこの「鷺娘」を踊っているそうですが、本当にこの人の為にあるような、美しく感動的な踊りでした。あまりに素晴らしいので、幕が下りた後もしばらく拍手が鳴り止まなかったほどです。この十八代目襲名披露の為にしばらく「鷺娘」は封印していたそうで、この舞台を見ることができて本当に良かった!玉三郎丈は日本の宝です。皆さんも機会がありましたら、ぜひご覧になってみて下さい。きっと感動すると思いますよ。
さて、ウワサの「研辰」ですが、野田秀樹演出、ひびのこづえ衣装のとても歌舞伎とは思えないお芝居。殿様の刀を研いだ縁で侍に取り立てられた研辰。武芸のダメな研辰をいじめる家老に仕返しをしたところ、運悪く家老は死んでしまいます。二人の息子に仇と追われてしまいますが、研辰は弱っちく逃げるだけ。周りの人々の「助けてやれよ」の言葉に諦めた息子たちは帰っていき、命拾いしたと大喜びする研辰。しかしそれもつかの間、戻ってきた息子たちにあっけなく斬られてしまいます。倒れた研辰の上に、はらはらと真っ赤な紅葉が。「無常」とはこのことです。
のっけから「血管切れないか!?」くらいのものすごいテンションでギャグを連発、場内は大爆笑!!ハヤリのお笑いネタまで飛び出して、もう笑いが止まりません!もう歌舞伎の「型」は無視で、モウレツに突き進んでいく芝居ですが、大詰の「いざ、勝負」という時の研辰のセリフ「研ぎまする、研ぎまする、てめえの研いだ刀で討たれまする。生きてえなァ、生きてえなァ…」は元の歌舞伎のまま。先人の生み出した美しい日本語を、見事に生かしているのです。そこがまた素晴らしい。ちょっとハミダシすぎの芝居ですが、まあ、こんなのがあってもいいかな(笑)。きっと歌舞伎が「現代劇」だった江戸時代には、「歌舞伎」ってこういうものだったんじゃないか…と思いました。歌舞伎が生み出した「回り舞台」や「セリ」を巧みに生かし、現代の照明技術も使う。こういう芝居を現実にしてしまう勘三郎丈のエネルギーに敬服です。しかし…「鷺娘」とのギャップがスゴイ。
今回は本当に豪華な芝居でした。こんなのが見られて良かった。



□05/05/01 #43 四季が織り込まれた遊び

最近、「こいこい」にハマっています。初めはわけもわからずただ点数の高い札を取っていましたが、「こいこい」は早く役を作った方が勝ちなので、持ち札にどの役が多いかに絞ってその役を取っていくと良いようです。最高は「四光・青短・赤短・猪鹿蝶」とスゴイ役が揃って自分でもびっくり。遊びについてはさておき、この花札は「琳派」のデザインの流れを汲んでいるそうです。満開の桜に幔幕、八橋に小野道風…四季の花鳥風月を合わせて遊ぶなんて、これを考えた先人は文字どおり‘風流’ですね。

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□05/04/24 #42 十八代目 中村勘三郎 襲名披露 四月大歌舞伎

4月は十八代目襲名披露第2弾。今回の楽しみは「籠釣瓶」の玉三郎丈演じる「八橋」です。昼の部は「源太勘当」「京鹿子娘道成寺」「世話情浮名横櫛」。夜の部は「毛抜」「口上」「籠釣瓶花街酔醒」。
「娘道成寺」は華やかな衣装を次々と変えながら踊る長編舞踊ですが、時間の都合か所々端折ってあって、ちょっと前にTVですが玉三郎丈の素晴らしい娘道成寺を観ていたので、少し物足りない感じがしました。
「世話情〜」は名台詞「しがねえ恋の情けが仇」で有名な芝居。仁左衛門丈の与三郎と、玉三郎丈のお富の最高の組み合わせで魅せてくれます。湯上り姿のお富の色っぽい姿と、豆絞りの手ぬぐいを頬被りした粋な与三郎。いい女といい男はいつ観てもいいですね。
「毛抜」は去年の海老蔵襲名興行を大病で途中休演して以来の團十郎丈が歌舞伎座に帰ってきて、やんやの大盛り上がり。やっぱり歌舞伎はこの人がいないと始まりません!お姫様の髪の毛が逆立つという奇病を怪しいと睨んだ粂寺弾正(團十郎丈)は、ひげを抜くのに使っていた毛抜が踊りだすのを見て、天井に潜んでいた曲者を突き落とします。その曲者が持っていたのは磁石。そのせいでお姫様の髪が逆立っていたというわけです。さすがはお家芸、團十郎丈がハマリ役の、おおらかで楽しい芝居でした。
待ってましたの「口上」は、次男の七之助丈も戻ってきて勘三郎、勘太郎、七之助の中村屋揃い踏み。またもや左團次丈のオモシロい口上で、客席も大盛り上がり。やっぱり襲名披露は、コレがあるからたまりません!
「籠釣瓶〜」は田舎者であばた面の次郎左衛門が江戸見物に来た吉原で、偶然見かけた花魁道中の八橋に一目惚れ。しげしげと通ううちにまんざらでもない様子の八橋を身請しようと、仲間に披露する次郎左衛門ですが、実は八橋には栄之丞(仁左衛門丈)という間夫がいて、「どちらをとるのか」と責められます。結局八橋は栄之丞をとり、上得意の次郎左衛門に「口を酸くして百万だらすすめても、あちきは身請は不承知さ」と愛想を尽かします。思いがけない愛想尽かしに次郎左衛門は「花魁、そりゃあちとそでなかろうぜ」と名台詞を吐きます。思い切った様子の次郎左衛門ですが、再び訪れた茶屋で、名刀「籠釣瓶」で八橋を斬ってしまいます。華やかな花魁、遊女がたくさん登場し、いかにも歌舞伎らしい豪華な芝居でした。
やっぱり歌舞伎はイイ!楽しい1日でした。



□05/03/27 #41 シンプルはやっぱり美しい

最近はすっかり歌舞伎の話ばかりになってしまったので、ここで少し違う話を。
 私はお茶が大好きで、いつもはおなかにもたれない焙じ茶を、仕事場では烏龍茶や紅茶、コーヒー、ちょっと気分を変えたい日には簡単にお薄を点てていただいたりしています。うつわは中に色がついていると、飲み物が美味しそうに見えないので、色のついていないものが基本。
最近見つけてお気に入りなのが、ドイツ「KHALA」のアップデイトシリーズのコーヒーカップ&ソーサー。ソーサーをカップの上に乗せると、ぴったり沿うようにデザインされています。シンプルでいて、機能的。「和」のお菓子、布にもよく合います。
…それもそのはず、デザイナーのバーバラ・シュミットが日本旅行をした際に日本の陶磁器に魅了され、得たインスピレーションをもとに「西洋と東洋の共存」をテーマにデザインされたそうです。 なるほど、日本独特の「簡素な美」を見出すことができますね。
「Deutschland Good Design 2003」など数々の賞を受賞しているそうです。
「KHALA」のウェブサイトはこちら
http://www.kahla.jp/



雑記帳 #31〜#40
雑記帳 #21〜#30
雑記帳 #01〜#20

【和な暮らし】